労組だから出来ること、変えられることがある
【全医労旭川病院支部】
全国136カ所でスト配置、前進回答引き出す!
全国の国立病院で働く医療労働者が加入する全日本国立医療労働組合(全医労)は、24春闘の先陣をきって立ち上がりました。
物価上昇が続くなか、賃金が上がらなければ人材流出を止めることはできないなどとして、「常勤職員は月額基本給4万円」「非常勤職員は時給で250円以上」の要求を掲げ、3月1日には全国136の病院で「全国一斉ストライキ」を構えて団体交渉へ。
その結果、1次回答は基本給改定率1・5%(平均改定額4290円)でしたが、2次回答では平均改定率2・9%(平均改定額8324円)が示されました。中高年層では国家公務員水準を上回ります。非常勤職員の経験加算についても、機構がその必要性を認めたことから妥結。
宣伝後、支部長の河戸千秋さんと組合員の山下さん(仮名)のお二人から職場の実態や思いをお聞きしました。
患者に寄り添う看護師になりたい
「手に職をつけたい」との思いから看護師の道へ進んだ河戸さん。滝川の看護学校時代の同級生から「国立病院に行くから一緒に」と誘われて札幌の説明会へ。札幌では南と西、その後に八雲を経て旭川に勤務しています。
山下さんは、幼稚園の頃から「看護師になる」との思いを抱いていました。「兄弟に障害があり病院は身近な場所でしたが、その時の病院側の対応がとても悲しかった」と振り返ります。「もっと患者さんに寄り添える人になりたい」との思いから看護師になりました。
「山下さんに出会えてよかった」「声を聞くと落ち着く」~担当してきた患者さんから言われた時など、山下さんが看護師としてのやりがいを感じる瞬間です。
河戸さんも、「やっぱり患者さんからの言葉って、すごく嬉しいですよね」と話します。状態悪化を懸念して、帰宅させてあげることが難しい肺がんの方を担当した時は、毎週末帰宅できるように主導的に調整を行いました。
患者さんが「髭剃りが上手だね」とかけてくれた一言が忘れられません。その一言に込められた思いから、河戸さんは看護の本質である「寄り添う」ことの大切さを実感したそうです。
患者さんとのエピソードを語るお二人の表情は、とても柔らかで温かく、看護への思いが溢れていました。
人手不足が常態化
「本当の看護」を奪う
「旭川医療センター」は、もともと「結核症」などに対応していたこともあり、感染症に強い病院です。また、「海沿い」など遠い地域から通院する人もいたりするなど、広域医療の重要な役割を担っています。
ひと昔前と変化している点は、患者の高齢化による認知症や「せん妄(せんもう)」など「目が離せない」状況になりがちで、場合によっては「行動抑制」せざるを得なかったり、そのことが「寝たきり」につながってしまったり、「医療措置」の側面が強くなってしまうことも。
「とにかく人手不足なので、本当はもっとじっく患者さんに対応したいのに、それができなくて。もっと人手があれば・・」と河戸さんは憤ります。
山下さんも、昼休憩をまともに取れたことはなく、患者さんの体を拭いたり、口腔衛生もなかなか思うように手が回らず、何日も頭を洗ってあげられないケースや、病室の片付けも思うようにできないことなど、「もっと寄り添う看護がしたい」という思いと、慢性的な人手不足がそれを許さない現状とのジレンマに苦悶します。
もっと笑顔になれる職場にしたい
人手不足の現状を変えるためには、賃金や労働条件の改善が必須です。
非正規雇用の待遇では、「3年で無期転換」と法律を上回り雇用の安定に資する一面もありますが、勤続加算がないなど長く働き貢献している人への位置づけも課題です。大手求人サイトなどで募集をかけても、まったく応募がない状態です。
長く働いているベテラン・中堅層も辞めてしまうし、新しい人たちも入ってこないままでは、人手不足に拍車がかかるだけです。「夜勤をしなくても生活が苦しくない専門職としての賃金が必要」と河戸さんは強調します。50床を夜間は3人体制で看ていますが、世界的に夜間は30床で4~5人体制が常識です。
「患者さんを怒らないで、もっと手厚い看護ができるようにしたい」との思いは切実です。山下さんは、後輩たちが「これからも働き続けたい」と思える環境が大事だと指摘します。休めない、常に疲れている、イライラしてしまう。そんな緊張感や重苦しい空気だと、「教えてほしいけど聞けない・・」「いまは声をかけない方がいいのだろうか・・」と、後輩たちへの無言の圧力にもなりかねないと危惧しています。
患者さんはもちろん、新人も中堅もベテランも「もっと笑顔になれる職場」にするためには、人手を増やすことが必要です。「賃金や労働条件を改善することが、人手不足を解消する最大の改善策です」~河戸さんの言葉は力強く、揺るぎないものでした。
患者も労働者も尊厳が守られる医療を
河戸さんは、「なんで、いまだに面会できないの?と言われたり、世間的には『コロナは終息』とのイメージが強いですが、病院の中では何も終わっていません」と医療現場の実態を指摘します。
どの医療機関でも、クラスターが続発する状況の中、医療関係者は「交流」の機会をできるだけ避け、「つながる」ことが困難なままです。
山下さんは、「賃金水準も『看護師は高い』と思われがちですが、夜勤をやり、ゴールデンウィークや年末年始も関係なく働いて、やっと、この水準なんです」と実情を理解してほしいと訴えます。
病院へ来る人たちは、今まで出来ていたことや、これからも出来るはずだったことができなくなったり、コミュニケーションを取れなくなったり。そういう人たちに寄り添いながら、医療労働者が日々向き合っているのは、健康や命に加え、患者の「人としての尊厳」を守り抜くことです。その医療労働者の尊厳が「踏みつけ」にされたままでいいはずがありません。
この春闘での前進を力にして、同じように悩み、苦しんでいる医療労働者の仲間たちへ、「労働組合だから出来ることがある!変えられることがある」と伝えていきたい~河戸さん、山下さんは前を見据えています。
医療現場の声を、実態を広く知らせ、診療報酬など公定価格をはじめとする制度改善を求めて、全医労・医労連の仲間たちと一緒に声をあげましょう。
全医労
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