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執筆者の写真道労連 DOROREN

「現場の声とパワーで変える!」~2022年新春対談

 コロナ禍にあっても道労連は声をあげ続け、いのちとくらしを守る訴えを広げてきました。しかし、職場の外に目を向けてみると、声をあげることすらできない状況が広がっています。そんな中、「声をあげなきゃ変わらない」と組合結成に立ち上がった全日赤札幌血液センターの佐藤宏美執行委員長にお話を伺いました。



三上 明けましておめでとうございます。


佐藤 おめでとうございます。今年もよろしくお願い致します。


三上 コロナ感染対策が始まって2年たとうとしています。職場の状況はどうですか?


佐藤 私は看護師で、今は新札幌の献血ルームで採血業務をしています。 採血前後に献血

者の体調観察など行い、安全・安心な献血を支える仕事です。コロナ禍でも血液は必要なので、安定供給と密をさけるために 「事前予約」してもらうことを呼びかけています。


 

労働者のパワーを集め、強く!

三上 佐藤さんの労働組合活動の原点はなんですか?


佐藤 「まじめに働いてるのに何故生活が苦しいんだ」という子どもの頃からからの疑問と怒りが私の組合活動の原点です。


三上 労働者が使い捨てにされていることへの怒りですね。


佐藤 経営者が豊かに暮らしているのは労働者が働いているおかげです。もっと労使が「対等」であるべきです。豊かな生活ができる賃金をもっと求めていいと思います。労働者だけが貯金もない、将来が不安という貧困に置かれているのは許せません。


三上 佐藤さん自身が働いてみて感じたことは?


佐藤 以前いた職場がブラック職場で、周りを見ると看護師だけじゃなく職場全体がそんな状態でした。当時は労働組合が職場にあることも知らず、このままでは自分の方がダメになってしまう、と辞めざるを得ませんでした。


三上 労働組合がないと労働者は圧倒的に弱いですね。


佐藤 賃金も働き方も労使の力関係で決まりますよね。じゃあ労働者もパワーを持てばいいんだ、そのパワーは連帯すること、団結すること、そして社会を巻き込む運動に変えていくこと、それしかないと気づいたんです。労働者ってもっと強いんだよ、対等だと、みんなにもっと知ってほしいなあって思います。労働組合もっと強くなんなきゃダメじゃん、というのが始まりなんです。1日8時間働いても貧困なんて許せません。


 

愚痴を言ってても変わらない!

三上 血液センターでの労働組合結成の経過について教えてください。


佐藤 組合結成前から人員不足で「年休が取りづらい」「時間外が多い」ことの改善を上司に訴えていました。でも、何も改善されませんでした。特に年休が取れないことへの不満が強く、仲間と居酒屋で愚痴を言う日々でした。転職して来た人が多い職場だからか、「イヤなら辞めれば」と言う人もいました。そんな時に、全日赤という組合があることを知り、相談メールで初めて労働組合とつながり、まず個人加盟しました。他の職場の話を聞いてすごく勉強になりましたが、自分の職場の改善は進みませんでした。


三上 転職は考えましたか?


佐藤 2カ所別の職場を経験していましたが、「辞めても一緒だな。医療業界にいる限り同じ問題がついてくる」と思いました。血液センターの仕事も好きだったので、辞めずにここを働きやすくするにはどうするかって考えたときに、「あっ、これはもう組合を作れということなんだ」と思いました。2019年9月に仲間3人で労働組合を立ち上げ、結成とほぼ同時に2人入ってくれ5人で活動をスタートしました。



 

すごく緊張!組合結成

三上 職場を変わっても根本的には変わらない、組合が必要だと決断できたのは素晴らしいですね。労働組合への職場の反応は?


佐藤 いざ結成前はすごく緊張しました。「労働組合を理解してもらえるか」「応援して味方になってくれるか」など、今じゃ考えられないくらいアウェイな感じだったので、結成前日は「明日から職場で口きいてくれるかなあ」「穏やかな日は今日で最後かもね」なんて仲間と話していました。結成通知を出して、すぐに秋闘でボーナスの交渉と、組合事務所や掲示板の要求、年休の申請を断らないこと、人員配置増と、臨時職員の雇止め問題で団交しました。


三上 全日赤や道医労連、地区労連の仲間のサポートもあって、すぐに団交までできたんですね。要求は前進しましたか。


佐藤 労働組合で要求すると、年休申請を断られずに取れるようになりました。「組合のおかげだ」「これだけやってくれてるから私も協力したい」という声も出され、自分たちの自信もUPしました。「あなたの力を貸してください。団交に参加してぜひ自分の言葉で経営陣に訴えてほしい」と話すと「入るわ」って言ってくださった方がいて、結成から2年間ですけど、労働組合の様子を見てくれた人は、確実に必要性をわかってくれています。


 

格差や使い捨ては許さない

三上 そのほかにも実現したことはありますか。


佐藤 臨時職員の一時金を正規の8割の率で支給させることを勝ち取りました。これまでの4倍に一時金が増額しました。2021年10月には臨時職員、パート職員の寒冷地手当の支給を勝ち取りました。さらに、臨時職員の5年雇い止め問題、各種手当や年休日数増など、非常勤職員の処遇改善を求めてたたかっています。


三上 すごいですね!なぜ実現したと思いますか?


佐藤 雇用形態がいくつもあって、同じ非正規でも一時金や寒冷地手当に大きな格差がありました。同一労働同一賃金の法改正を武器に、「なぜ同じ非正規職員なのに格差があるのか、冬が来るのはみんな一緒だ、暖を取らないと死んじゃうだろ」と追及し、1年かけて粘り強く交渉を続け、勝ち取りました。


三上 5年雇止めルールはまだ残っているんですね。


佐藤 結成時に加入した臨時職員の方の時にすごい交渉したんです。でも、「難しい、前例を作りたくない、最初から5年契約となっている」と言われ、なかなかそこは明確にできませんでした。「雇用がなくなるくらいなら派遣にもどっていいですか?せめて無期雇用にしてほしい」という声まで届いています。人材の使い捨てだと思います。許せません。


三上 当事者である非正規労働者の方たちは組合に入ってくれていますか?


佐藤 雇い止め解消の道筋が見えないと当事者が声をあげるのは難しいと思うんです。たたかったけど結局雇い止めになりましたでは、なんのために組合に入ったのかとなってしまいます。


三上 5年雇止めルールが横行している職場では、ここが最大の要求であると同時に主体者になるための最大の課題ですね。



 

根本から変えるのは産別のたたかい

三上 今、日赤本社から提示されている成果主義賃金を導入する「Rプラン」撤回のたたかいも全日赤全体や医労連という産別での大きなたたかいが必要ですね。


佐藤 もし組合がなかったら、大変なことになってます。組合があって交渉できるということは一方的に強行させないことができます。組合がなかったら「Rプラン」の情報すら全く入りません。導入の提案が2020年1月ですから、本当にすごいタイミングで組合を結成したな、あの時組合結成を決断してよかったと思います。


三上 職場内のたたかいだけで要求が実現できそうですか。


佐藤 やはり、企業内だけでは限界があります。日赤の中で交渉していて日赤がよくなるのはいいけれど、変えられる範囲はかなり狭くなってしまいます。医療は 診療報酬で収入が決められるので、そこを変えるのはやっぱり産別じゃないとできないと思います。


三上 道労連は「いい○○」「めざすべき○○」というのをはっきりさせませんかと、産別に投げかけています。いい看護ってなんですか、そのために賃金ってどうあるべきですか、ということをはっきりさせ、どこの職場に行ってもこのルールが守られて、最低水準はこれですというものを作るのが産業別労働組合の役割だと考えています。


佐藤 組合のない職場が圧倒的に多いし、ブラックな職場もたくさんあります。若い人に労働組合を知ってほしいです。なにかあったら組合に相談できる、セーフティネットなんだとわかっていない人が多い。私も知らなかったし、まったく無知識で社会に出る人がほとんどです。そこをなんとかしたいですね。看護学校でも教えてほしいです。


 

熱く、そして楽しく

三上 組合員の拡大目標はありますか?


佐藤 まず2ケタにしたいです。アプローチしたい方が何人もいます。組合説明会がコロナ禍で開けないので、今は、職場で関係性を作っていく中で、個別に声をかけ、10月にも2名増えたんです。今日も会って話をしてきたんですが、「私も入るのは時間の問題かもしれません」と話してくれました。熱い方なので、「その熱い思いを団交に」と思っています。


三上 この人と決めて話をしてるんですね。職場では「佐藤さんは組合の人」と見られているのかな?どんなことに気を配っていますか。 


佐藤 「組合の人」とみんな知っています。仕事をまずきちんとして、まわりのこともやっていかないと信頼は得られないと思います。自分にとって働きやすい職場は、相手にとっても働きやすいし、誰もが働きやすい環境を作るために、すごい神経を使ってます。


三上 大変ではないですか。


佐藤 むしろ組合活動は楽しいです。組合への意見もどんどん言ってほしいです。意識して社会のことも話すようにしてます。TVで米軍への「思いやり予算」を取り上げていたら、「まず私たちを思いやってよ!」と話したり。選挙もそうですが、社会を変えていくことも大事な取り組みです。楽しく活動して職場を良くしていくのが大事だし、そのために組合活動をやる。働いてよかったなと思うのが一番で、つらくて辞めたい、でも組合活動やらなきゃでは絶対に続きませんよね。


三上 熱く、楽しく語る、ですね。団交でこの人に発言して欲しい、など組合員のパワーを活かそうとしていることもすごく大事だと思いました。


 

失敗しても気にしない!前へ!

三上  最後に今年の抱負を。


佐藤 団交の絶妙な駆け引きがすごく楽しくて、好きなんですよ。交渉して交渉して1歩ずつ前進させてというのが好きなんです。楽しいんだよって知ってほしい。議論して要求をまとめあげていくことがこんなに楽しいのかって、知れて幸せだなって思います。失敗してもいいから行動してほしい。やっては失敗して、もっとこうしようって変えてやってきたから、これからも変わっていくし、そういうことをあきらめないでほしい。あきらめたらそこで終わりだし、楽しくない。札幌で組合員が2ケタ、3ケタになったら、要求も大きく前進するし、全国でも仲間がふえるんじゃないかなと思います。


三上 たくさんの学びがありました。

 一つは、現場の労働者としっかり対話する活動の大切さです。前進を勝ち取れたのは、要求が「本当に実現したい」要求になっているからで、「低賃金や格差をなくしたい」、という熱い対話が実を結んでいます。

 二つ目は、労働組合がない職場に労働組合を広げる必要性です。労働組合で交渉したら要求が実現した、労働組合のこうしたパワーをもっと知らせる必要性を実感しました。

 最後に「楽しむ」ことの大切さです。組織拡大を、「力を発揮してほしい」という構えで呼びかけている点や、役員請負でなく「みんなの力で前進しよう」の構えが大事ですね。道労連は22春闘を、「どうせ無理」とあきらめから出発するのではなく、「どうすれば実現できるのか」の戦略づくりを重視したたたかいに挑戦しようと提案しています。一緒にがんばりましょう。


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